2011年8月15日月曜日

本「多摩のものづくり22社」【11年29冊目】

著者 : 山本明文
ダイヤモンド社
発売日 : 2011-04-08
<本の紹介>
大田区ばかりが中小企業の街ではない。ハイテク地帯の多摩地区で独自の技術を培いつつ、着実に成長を続けている技術先行型優良中小企業を発掘。初めて公開される、オリジナリティあふれる技術と経営者の人となり。10年後の大企業はここから生まれる。

<メモ>

  • 東西に広がる東京都の中で23区を除く西側の多摩地域には、古くは航空機産業が発展して、多くの「もの作り企業」が生まれてきました。
  • 現在はIT、エレクトロニクス、バイオをはじめ、航空機産業は宇宙産業へと発展し、計測機器、光学機器、食品、印刷にいたる実に多様な製造業が存在します。また、多摩には、大学や企業の研究機関が多く立地しているのも大きな特徴で、その利点を生かして盛んに産学連携が行われてきました。
  • 多摩地域が生み出す工業製品出荷額は、東京都全体の8兆236億円のうちの半分以上、53%になり(工業統計、2009年調査)、埼玉県の南部と神奈川県の北部東部を加えた、いわゆる広域多摩まで範囲を広げると、11兆1465億円(2008年度)に及びます。
  • 社団法人首都圏産業活性化協会は、広域多摩をTAMA--Technology Advanced Metroporitan Area:技術先進首都圏地域と名付け、自らも準正式名としてTAMA産業活性化協会と名乗りながら、この地域を世界有数の新規産業創造の地として発展させようとしています。
  • 2世紀に創建されたという大国魂神社。明治神宮や靖国神社と並んで特に格式の高い「東京五社」のひとつだが、1900年のひときわ長い歴史から、別格な存在といえる。毎年4月末から5月にかけて行われるのが「くらやみ祭」だ。1週間にわたって行事が続くが、なかでも24台の山車の巡礼と8基の神輿による神輿渡御は最大の見所で、毎年70万人の観光客が訪れる。「くらやみ祭」とは何やら想像をかきたてる名前だが、実際、かつては若い男女が集まり歌の掛け合いをする歌垣が行われていたという。
  • もの作りではスピードよりコストが優先され、工場もどんどん海外へ行ってしまいます。しかし、サービスビジネスはコストよりもスピードが優先される。
  • 東京商工会議所の「勇気ある経営大賞」、「東京ベンチャー技術大賞」、サービス産業生産性協議会の「ハイ・サービス日本300選」、多摩ブルー・グリーン賞、まちだ経営革新大賞、元気なモノ作り中小企業300社、東京トライアル発注認定制度・認定、優秀経営者顕彰
  • [交通システム電機]立川市の東、多摩モノレールの泉体育館駅近くの住宅地に踏切警報灯を備えた会社がある。交通システム電機の立川事務所だ。といってもそこに鉄道が走っているわけではない。24時間365日、信号を点灯し続けて耐久性を試験しているのだ。「夏休み親子工場見学会」もやっており、道路交通信号や待ち時間表示付きの歩行者用信号など、会社の主要製品の製造現場に親子を案内し、会社の環境への取り組みもていねいに説明した。「学校の先生や親から聞くのと、普段は会わない会社の社長さんから話を聞くのとでは、子どもたちにとっても違った体験だったようです。その後は会えば挨拶してくれますし、地域の方と知り合うことはつくづく大事だなと感じました」。
  • [田倉繃帯工業]こだわったのが自社による一貫生産だ。撚った特殊な糸を作るところから始めて、生地として織り、その後も、裁断して縫製、パッケージに入れるところまで自社工場で行った。他のメーカーは、糸、生地、その後の縫製で分業化が進む中で、製造の主導権を失い、海外とのコスト競争に敗れていった。高い技術を持ちながらも、分断された製造体制の中では、それを製品の付加価値として形作ることができなかったのだ。
  • [千代田第一工業]狛江市の本社前には、色とりどりの花々で囲まれた小さなスペースがある。真ん中には木製のテーブルとベンチも置かれ、ドリンクの自動販売機も据えられている。ミニ公園だ。「この街にはお年寄りが多く、狛江駅まで歩いていくには途中で休める場所が欲しいんじゃないか。そう思って作りました。ここの自動販売機の収益金は全額狛江市に寄付しています。」「みんなが近所の商店で買い物をするようになればいい。そうしなければ街全体が寂れてしまいます。便利さだけを追求する傾向には反省が必要なのでは。」
  • 高い技術が求められるのにも関わらず、急な依頼にも応じ特別に料金を上乗せすることはない。得意先満足を第一にしているからだ。「納期を守る。急な依頼でも特急料金を取らない。いずれも、以前からずっと取り組んできたことですが、このようなことを実現しようとすれば、会社全体の仕組みを変えなければならない。これはある種のイノベーションです。たとえばウチには、営業の社員が外出している時でも、会社に電話がかかってくれば、自動的に転送して取り次ぐ仕組みがあります。営業マンは外出先でも時間を無駄にせずにスケジュールを進めることができます。情報はオープンにされるので、その時、お客様と納期の約束をすれば、翌日には社員全員が知るところとなります。営業マンの約束は、会社の約束。そうなれば全員で守ろうということになります。誰かに命令されたから仕事をするのではなく、自分が約束を守るために働く。そんな自覚が社員に生まれ、それが得意先満足を高める一番の理由になっています。」会長が地域活動としてもうひとつ取り組んだのが、「狛江古代カップ多摩川いかだレース」だ。多摩川を舞台に手作りのいかだで約1.3kmのコースを競う。2010年の第20回大会で実行委員長を務めた。狛江市のほか、多摩川流域の調布市、稲城市、世田谷区、川崎市など多くの地域から、毎年90前後のチームが集結する。
  • [東洋システム]マラソン計測システムでは、タイムは瞬時に出て、テレビ放映されました。開発には1年半がかかり、もちろん相当なお金も使いました。大会当日も社員が20人ほど出て対応はしましたが、こちらも赤字です。ボランティアみたいなものでしたが、一度作れば、あとは仕事ができるたびに回収することができます。日本では3000人以上が出場する市民マラソンが年間3000大会あると言われています。年間100大会でもこのシステムが使われるようになれば、大きなビジネスになります。「研修で何を学んできたのか。教えようとすれば自分でも整理しなければなりません。みんなの前でしゃべれば、自分の耳にも入って、再度、勉強することになります。私もセミナーでお話する機会をいただいていますが、相手の人のためというよりは、自分のためですね。」社長自身、過去にはたくさんの試行錯誤を繰り返してきたという。「失敗も山ほどありました。しかし、苦労しただけ安全地帯は広がります。」とあくまで前向きだ。
  • [野村産業]「損得も大事だけれど、損得じゃないものが世の中には必要ですよね。」
  • 日本古来の終身雇用制もいいね。昔から、十できる人と七しかできない人では当然給料の差がありました。差がついても、お互いわかっているから文句は出ない。数字がよい人は、悪い人を引っ張り上げて、お互い協力するのが日本古来のよいところで、それが"むら社会"なんです。それを、成果主義導入なんていって収益だけで人間を評価しようとするから、世の中全体がギスギスしちゃう。このごろは、リストラといって従業員の首を切っている。おかしい。立ちいかなくなったらまず社長の首を切るべきでしょう。
  • [前田金属工業]前田金属工業のすぐ横を走るのは多摩モノレールである。柴崎体育館駅と甲州街道駅、どちらの駅から向かっても目に止まるのが同社の屋根だ。ちょうどモノレールの高架から見下ろすことができる位置に、黒地に白い格子模様の太陽光発電のソーラーパネルがびっしりと並んでいる。ちょとした近未来の風景に、何をしている企業なのか、興味を惹かれる人も多いに違いない。夜になると工場の壁面に12星座が浮かび上がる。紫外線で発行するルミナイトで描かれており、暗闇に幻想的に光る。

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